だが万馬券は当たらない

急死したとき遺族にこれを読んで俺の存在を感じて欲しくて書いてる

酔いに任せた、飛沫のような思いつきではあったが、隣で君が放つ音程に耳を澄ませ、それに合わせて自分の声量を調節しながら、僕たちがこれまで辿ってきた道すじと、いま直面している巨大で漠然とした問題について、改めて何事かを悟る思いだった。小さな車内で感じたささやかな幸福感、それを僕は間違いのない真実として大切にしたいと思った。他にどんな物事が存在して僕たちを邪魔してくるとしても。よく似ている僕たちが交わることになった運命に力を見出したい。この期間君が珍しく、少しだけ吐露した言葉は僕のそれとほとんど同じだ。僕は人生の一つの限界の壁にじりじりと追い詰められつつある気がしているが、同じ問題意識を君が共有しているという、その事実に力を見出したい。高校時代からずっと、自転車に乗って君と多くの時間を無益に過ごしてきた気がするが、それら沢山の記憶はすべて一つの力に集束していくのかもしれない。