だが万馬券は当たらない

急死したとき遺族にこれを読んで俺の存在を感じて欲しくて書いてる

ある宗教家の回想録に吐きかけられた唾液

実に三十もの言語に翻訳された詩の作者の私的な関係を暴き出して出版した人間にその父が語りかけたとされる言葉の、とりわけ執拗に多用された「忌まわしい」という形容詞に含まれた7つの相異なる意味についてまとめたと自ら吹聴するゴシップリポーターが夜道で暴漢に襲われた日の早朝に、そうした予定される事件現場を通り過ぎるマラソンランナーのしなやかな両脚の筋肉にも似て強靭なディスクジョッキーの中指に光る指輪のエメラルド、それを通して見る黒い影となった君の姿のファンダメンタルな笑顔と歯列に関連して想起された避けようのない現代人の主題に提供できうる思考のヒント、などと目されながら、ついぞ確証されることのなかったメトロポリスの態様にひそむ静寂にことつけて詠みえる新たな唄にちなんで涙する木枝上の鳥の小さな眼に映る秋の街。